◎法界坊

『隅田川続俤』(すみだがわ ごにちの おもかげ)は奈河七五三助(ながわ しめすけ)作の歌舞伎狂言。通称は『法界坊』。4幕7場からなる世話物で天明3年(1784年)5月、大坂 角の芝居(藤川菊松座)で初演。主役法界坊の悪と滑稽さが喜ばれ、人気を博す。 法界坊の名は近松門左衛門の『雙生隅田川』をはじめとして多くの先行作に登場する破戒僧で、本作も初代中村仲蔵が『色模様青柳曽我』で演じた大日坊を再構成した作品である。 歌舞伎では珍しい喜劇で、極悪人だがどこか憎めない法界坊の演技が眼目である。最近では十七代目勘三郎が愛嬌の後ろに悪の暗さと哀愁がにじみ出て優れた舞台だった。今日でも最も観客受けするバレエのような珍妙な振り付けや縄跳びの所作や洒落は、彼によって工夫された型である。